Chapter.2 伝統と創造を。それは古典を現代へ。

もうひとつ大切にしているのは伝統と創造。日本の建築には昔からの様式、形態、伝統があります。片や時代は前進していきます。父の時代には鉄筋コンクリートなどが登場してきました。モダニズムとよく言われますが、私たちは伝統を理解した上で現代に置き換えたらどうなるのかをずっと考えて設計にあたっています。伝統、あるいは古典を理解した上でモダンを求めていく。モダニストは本来歴史に詳しい人のことです。これまでを壊すにしろ、超えていくにしろ、熟知していなければできません。

丹下都市建築設計の歴史は、日本の伝統的なものを大切にしながら、どうやって新しい社会、新しい生活空間のなかで融合させていくか、その挑戦の歴史です。あるときはコンクリートという新しい材料を使ってみたり、あるときは鉄骨を使ってみたり、あるときはガラスを使ってみたり、それでいながら日本的な繊細さを失わない建築をめざしてきました。たとえば香川県庁舎ではコンクリートで軒や柱梁の伝統的な日本建築を表現して繊細さを出しています。

ただ、社会全体が成長しようと躍動していた丹下健三の時代と違い、現在は社会よりも個人に重きがおかれている時代です。丹下健三から受け継いでいることは大きく変わっていませんが、建築を取り巻く環境や人の志向は変わっています。DNAに+という言葉を足している意味はそんなところにあります。原点を忘れず、根底や根幹を担う部分は受け継ぎながらも、時代に応じたアウトプットを行う。伝統を大切にしながら現代的創造に取り組む。それがTANGE DNA+なのです。

根底や根幹を熟知した上で、時代に応じたアウトプットをめざす。

Chapter.2